• アメリカでは、なぜ多くのダムが撤去されているのですか?

    老朽化したダムを維持・改修することでもたらされる利益より、経済、環境、安全、そして文化的な面からみたコストのほうが大きい場所では、ダム撤去運動が活発になっています。ダムはもはや時代遅れの技術であり、多くの場合、ダムが解決する問題よりも、引き起こす問題のほうが多くなっています。ダム撤去の目的はケースによって様々ですが、多いのは、魚類やその他の生物の生息地と川の流れを回復する、土砂と養分の自然な流れを取り戻す、安全でないダムを排除する、カヤックのための急流を回復させる、税金を節約するなど様々です。

  • ダムはどのような方法で撤去されるのですか?

    ダムの撤去方法は、環境的要因、物理的な特徴、そしてダムの建設タイプによって様々です。代表的な方法は、制御発破や重機を用いて少しずつ取り壊す方法です。一般的には、まずダム湖の水位を下げ、堆積物を固めて運び出し、下流に流れても大丈夫な状態にして、最後にダム本体を取り壊すという流れです。その後、ダム撤去により新たにむき出しになった泥をなじませるため、野生の植物を植えるなどの環境回復のための努力が行われます。

  • 誰がダムの撤去を決定するのですか?

    アメリカでは一般的に、個人または小規模なグループが先頭にたってダム撤去のために活動していますが、多くは撤去の実現までに何十年もかかっています。ダムの所有者(民間、政府、地方自治体など)がダム撤去の最終的な意思決定権者ですので、地元の活動家、地方自治体、環境に関わる省庁などの組織が働きかけることが、ダム所有者を動かすことになります。

  • ダムの害を小さくするために、ダムを改善したり、新しい手段を用いることは可能なのですか?

    ダムの「改善」は、短期間だけ有効な絆創膏のようなもので、流域に影響を与えているより大きな環境問題の根本的原因には目をつぶってしまうことになります。「改善策」は、野生の魚類の真の回復、すなわち自然の再生産につながりませんし、川を遮断することによる多くの負の影響に対して長期的な解決策を提供することにもなりません。例えば、絶滅が危惧される魚を対象とした「改善ダム」は、費用のかかる魚用エレベーターや魚道をつくったり、ダムの下流側から上流側に人為的に魚を運んだり、水の放出を調整したりすることなどが含まれます。しかしこうした選択肢は、継続的に資金が必要となるばかりか、汚染の原因となり、結局は人工的に魚の数を増やさなければならなくなります。こうした短期間の絆創膏はむしろ、他のより効果的なダムの代替策を考案する、長期的な解決策に費やすための貴重な時間と資金を奪うことにもなります。環境学者と経済学者による最近の研究によれば、水力発電ダムに設置した高度技術を用いた魚道技術は効果がなく、ダム撤去が両方の問題の効果的な解決策であることがわかっています。魚の遡上を増やし回復する理想の方法は、ダムや他の障害物を取り除き、自然な川の流れをつくり、水の流れを保つことなのです。

  • ダムの代替として最も有効な手段はなんですか?

    新しい技術や運用方法の導入が成功するにつれ、ダムの代替策はどんどん増えています。家庭や会社、そして農業のレベルでも、利用する水量と排水量を減らす技術開発のおかげで、たくさんの貯水用ダムをつくる必要はなくなっています。例えば、家庭用の節水設備、再生水の利用、点滴灌漑や、芝生から渇水に耐性のある造園計画への転換、土地に適した農作物の栽培などがあります。地下水の涵養と川に沿った氾濫原の活用は、ダム湖で発生する膨大な蒸発によるロスもなく、水を貯め、濾過することができます。また、洪水緩和機能を持つ森林や農地の保全や湿地の生態を回復させ、流域全体で治水を分担することもできます。省エネ技術や太陽光、風、潮流、波、地熱、バイオマスなど環境負荷の少ないエネルギー源の導入は、より多くの発電ダムの引退を可能にし、よりクリーンなエネルギーによる未来へのシフトを支えることになります。小さな川や、魚の移動経路の上流部などでは、悪影響を減らす方法として、家庭レベルでのごく小規模な小水力発電を導入することも可能です。

  • ダムはクリーンでグリーンな再生可能なエネルギーを生み出しているのではないのですか?

    ダムはクリーンな燃料をつくっているという定説がありますが、個人や近隣住民レベルでのごく小規模な小水力発電を除いて、「クリーンな水力発電」は存在しません。水質や水環境にとっての水力発電は、大気質や世界的な気候変動にとっての石炭火力発電の存在となんら変わりがありません。特に水力発電は、川の下流の流れに大きな変動をもたらし、河川水路の水位を低下させ、魚や他の生物を大量死させてしまうことさえあります。

  • ダムは気候変動とどんな関係がありますか?

    最近の研究によると、世界的に、大規模なダムは温室効果ガスの最大の排出源のひとつであることが分かっています。過去20年以上におけるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の調査研究によると、大規模ダムが1年間に排出するメタンガスによる温室効果は、75億トンの二酸化炭素に相当するとされています。二酸化炭素排出量の比較は以下の通りです。

    • 世界の化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量(2004年):266億トン
    • 米国の化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量(2005年):60億トン
    • EU15か国の化石燃料燃焼による二酸化炭素排出量(2003年):33億トン
    • 世界の石炭による二酸化炭素排出量(2003年):96億トン
    • 米国の石炭による二酸化炭素排出量(2005年):21億トン
    • 米国の陸上輸送による二酸化炭素排出量(2005年):17億トン
    • 世界の航空による二酸化炭素排出量(2002年):5億トン
  • ダムは氾濫や洪水を防止するのですか?

    ダムの治水効果は限定的で、逆に洪水災害を拡大する危険性を内在しています。また、ダム建設への巨額の予算投入によって、通常の河川改修(堤防整備、河床整備、川幅拡張等)が進められず、氾濫危険地帯が放置されがちです。ダムを建設するよりも、護岸の整備や河床の掘削に予算を投じたほうが、より安い費用で、治水効果を高めることができます。

  • 日本ではダムで水を確保する必要なのではないですか?

    国や都道府県のダム事業者は、ダム等の水源開発は水需要の増加への対応や渇水への備蓄のため、と主張しています。しかし実際の水需要は横ばいから減少傾向にあります。たとえば人口が集中している首都圏(茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京)の水をまかなう利根川流域の水道給水量は、1990年代になってからほぼ横ばいになり、1995年以降は減少傾向にあります。東京都のみを見ても、1970年代から横ばいになり、1992年以降は減少の一途をたどっています。水需要減少の背景として考えられるのは、節水型機器の普及や漏水防止対策の推進により、一人当たりの給水量が減少していることが考えられます。また、今後さらに日本の人口もが減少して行くなか、雨水や地下水の適正な利用、異常渇水時には農業用水を一時的に水融通するなど、悪影響の大きいダムに頼らない方策を推進すべきです。

その他の「ダムについてのQ&A」は、水源問題全国連絡会のサイトの「ダム問題とは」を参照してください。
http://suigenren.jp/damproblem/

映画『ダムネーション』 – DAMNATION