MESSAGE from 内山節(哲学者)

 

かつて川は流れとともにあった。
その流れのなかではさまざまな生きものたちが暮らし、
川の流れは人の暮らしを結んでいた。

人間は自然を活用しながら生きている。
しかし自然とともに生きることを忘れた利用は、
自然を破壊するばかりでなく、人間からも大事なものを喪失させていった。
人と川をめぐる近代史はそんな歴史だった。

川がダムによってずたずたにされていく歴史は、
傲慢な人間社会をもつくりだしていく歴史でもあった。

この映画はダムの撤去に情熱を注ぐ人々の物語である。
鮭の暮らせる川を取り戻すことが主題になっている。
だがそれだけではない。
川の流れを取り戻し、鮭たちの世界を回復させることをめざす生き方のなかに、
人間としての失われた何かを取り戻すプロセスがあることを、映画は静かに訴えかける。

自然な川とともに生きようとする活動のなかに、
人間たちが手放してはいけない大事なものの回復があることを教えてくれる。

映画『ダムネーション』 – DAMNATION